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改定「離乳の基本」

厚生省児童家庭局母子保健課

 この離乳の基本は、離乳を進める際の「目安」を示したものである。これを参考にして、乳児の食欲、摂食行動、成長・発達パターンあるいは地域の食文化、家庭の食習慣等を考慮した無理のない具体的な離乳の進め方、離乳食の内容や量を、個々にあわせて作ることが望まれる。すなわち、子供にはそれぞれ個性があるので、基準に合わせた画一的な離乳とならないよう留意しなければならない。また、乳児が嫌がるときには強制せず、楽しくおいしく食事ができるような環境、雰囲気づくりはきわめて重要である。なお、この時期はあまり肥満の心配はいらない。

1.離乳の基準

1)離乳の定義

 離乳とは、母乳または育児用ミルク等の乳汁栄養から幼児食に移行する課程をいう。この間に乳児の摂食機能は、乳汁を吸うことから、食物をかみつぶして飲み込むことへと発達し、摂取する食品は量や種類が多くなり、献立や調理の形態も変化していく。また、摂食行動は次第に自立へと向かっていく。

2)離乳の開始

 離乳の開始とは、初めてドロドロした食物を与えた時をいう。その時期はおよそ生後5ヶ月になったころが適当である。

[注] 1. 果汁やスープ、おもゆなど単に液状のものを与えても、離乳の開始とはいわない。

    2. 離乳の開始は児の摂食機能の発達を考慮し、早くても4ヶ月以降とすることが望ましい。

    3. 離乳の開始が遅れた場合も、発育が良好なら生後6ヶ月中に開始することが望ましい。

    4. 発育が良好とは、首のすわりがしっかりしている、支えてやると座れる、食物を見せると口を開ける、などの状態をいう。

3)離乳の進行

1.離乳の開始後ほぼ一ヶ月間は、離乳食は1日1回与える。離乳食のあとに母乳または育児用ミルクを児の好むままに与える。離乳食のあと以外にも母乳または育児用ミルクは児の欲するままに与えるが、その回数は5ヶ月では通常4回程度、ただし母乳ではもう1〜2回多くなることもある。この時期は離乳食を飲み込むこと、その舌触りや味に慣れさせることが主な目的であり、離乳食から供給される栄養素量は少なくてよい。

2.離乳を開始して1ヶ月が過ぎたころ(生後6ヶ月ころ)から、離乳食は1日2回にしていく。また生後7ヶ月ころからは舌でつぶせる固さのものを与える。母乳または育児用ミルクは離乳食の後に与える2回と、それとは別に3回程度与える。

3.生後9ヶ月ころから、離乳食は1日3回にし、歯ぐきでつぶせる固さのものを与える。離乳食の量を増やし、離乳食の後の母乳または育児用ミルクは次第に減量し中止していく。離乳食とは別に、鉄欠乏、腎への負担、たんぱく質過剰等を考慮しつつ、母乳または育児用ミルクを1日に2回程度与える。

4)離乳の完了

 離乳の完了とは、形のある食物をかみつぶすことができるようになり、栄養素の大部分が母乳または育児用ミルク以外の食物からとれるようになった状態をいう。その時期は通常生後13ヶ月を中心とした12〜15ヶ月ころである。遅くとも18ヶ月ころまでには完了する。

[注] 1.食事は1日3回となり、その他に1日1〜2回間食を用意する。母乳は自然にやめるようになる。

2.1歳以降は牛乳またはミルクを1日300〜400mlコップで与える。

 

2.離乳期の食物

1)食品の種類

 与える食品は、離乳の段階を経て種類を増やしていく。

1.特に離乳の初期に、新しい食品を始める時には茶さじ一杯程度から与え、乳児の様子をみながら増やしていく。

2.離乳の開始のころは米、次いでパン、じゃがいもなどででんぷん質性食品を主にする。なお、調理法に気をつければ野菜、豆腐、白身魚、卵黄(固ゆでにした卵黄だけを用いる)、ヨーグルト、チーズなども用いてもよい。

3.離乳が進むにつれ、卵は卵黄から全卵へ、魚は白身魚から赤身魚、青皮魚へと進めていく。離乳中期から食べやすく調理した脂肪の少ない鶏肉、豆類、各種野菜、海草を用いることもできる。ただし、脂肪の多い肉類は少し遅らせる。

4.野菜には緑黄色野菜を加えることが望ましい。

5.離乳後期以降は、鉄が不足しやすいので赤みの魚や肉、レバー(鉄強化のベビーフード等を適宜用いてもよい)を多く利用する。また、調理用に使用する牛乳・乳製品の代わりに育児用ミルクを使用する等工夫する。

2)食品の調理形態・調理

 与える食物は、離乳の進行に応じて食べやすく調理する。

1.米がゆは、乳児が口の中で押しつぶせるように十分に煮る。初めは「つぶしがゆ」とし、離乳食に慣れてきたら粗つぶし、つぶさないままへと進め、軟飯へ移行する。

2.たんぱく質性食4品、野菜類などは、初めはなめらかに調理し、次第に粗くしていく。

3.離乳食は煮たものが中心となる。それぞれの食品の持つ味を生かしながら、薄味でおいしく調理する。

3)離乳食のバランス・献立

 離乳が進むにつれ、質および量を考え、献立に変化をつける。

1.離乳を開始して1ヶ月が過ぎた生後6ヶ月ころから、穀類、たんぱく質性食品、野菜・果物の献立を用意する。

2.離乳中期・後期ころから家族の食事の中の薄味のものを適宜取り入れて、調理法および献立に変化をつけ、偏食にならないように心がける。

 

3. 初期、中期、後期、完了期の設定

 離乳を進めていくうえで、どの時期にどんなものを与えたらよいかという目安があり、それは初期、中期、後期、完了期に大きく分けることが出来る。しかし忘れてはいけない事は、離乳の進み具合にはかなりの個人差があるので、子どもの発達や興味に合わせて進めていくことである。

 

準備期(3〜4ヶ月)

・果汁やスープ、だしなどを与えて少しずつ、いろいろな味に慣らしていく

・スプーンに慣れさせる

<リンゴやミカンを絞ってこしたり、イチゴをつぶしてこしたりし、湯冷ましで2倍に薄めて与える。果汁に慣れたら野菜スープやみそ汁の上澄みを与える。>

 

初期(5〜6ヶ月)

・少しずつ唇を閉じて飲み込むことを覚えていく

[食べ物の形態]・・ドロドロ、ベタベタ(プレーンヨーグルトの硬さ)

[回数]・・離乳食1回→2回  おっぱい、ミルク4回→3回

・今までの授乳タイムのうちの1回を、離乳食タイムに選ぶ

・赤ちゃんの機嫌がよく、お母さんもゆったりできる時間(毎日一定)にあげる

・無理強いして与えたり、食べないことには焦ってはいけない 

・離乳食を食べた後に、おっぱいやミルクを飲みたがったら、好きなだけ飲ませてよい

 

中期(7〜8ヶ月)

・舌を上下に動かせるようになる

・舌と上あごで食べ物をつぶすようになりモグモグ食べることを覚える

[食べ物の形態]・・ふわふわ(舌でつぶせる豆腐ぐらいの硬さ)

[回数]・・離乳食2回  おっぱい、ミルク3回

・消化の悪いものや香辛料などを除いて、食べやすくすれば、ほとんどのものが食べられる時期

・たくさんの味を経験させる

・モグモグできるように、少しずつ口の中に入れてやる

・栄養の主役はまだおっぱいやミルクで食後は飲みたがるだけ飲ませてあげる

・糖質、タンパク質、ミネラルの3つのグループから、バランスよくそろえる

 

後期(9〜11ヶ月)

・舌を使って歯ぐきまで移動させ、歯ぐきでつぶして食べるようになる

・舌を上下左右に動かせるようになる

[食べ物の形態]・・つぶつぶ(指でつぶせるバナナの硬さ)

[回数]・・離乳食3回  おっぱい、ミルク2回

・2回の離乳食タイムに加えて、もう1回を残りの授乳タイムの中から選ぶ。

・3回とも食べられるようになったら、だんだんと大人と同じ朝、昼、晩に近づけていく

・食品の味付けや硬さなどに好みが出でくる

 

完了期(1才〜1才半)

・歯で噛んだり、つぶしたりできるようになる

[食べ物の形態]・・大人の料理よりやや柔らかめ、やや小さめのもの

[回数]・・3回  ミルクや授乳を1日300〜400ml

・食べないならば量を制限する

・牛乳ばかり飲んでいるから、おなかがすかないのかもしれない

・栄養のバランスを取るために、食品の種類を多く組み合わせて、彩りよくする

 

〔注〕 1. 離乳の進行状況に応じた適切なベビーフードを利用することもできる。

2.       野菜はなるべく緑黄色野菜を多くする。

3.       たんぱく質性食品は卵、豆腐、乳製品、魚、肉等などを1回に1〜2品使用するが、離乳後期以降は鉄を多く含む食品を与えたり、鉄強化のベビーフードを使用する。調理用乳製品の代わりに育児用ミルクを使用する等の工夫が望ましい。

4.       離乳初期には、固ゆでにした卵の卵黄を用いる。

5.       海藻類は適宜用いる。

6.       油脂類は調理の副材料としてバター、マーガリン、植物油を適宜使用する。

7.       塩、砂糖は多すぎないように気をつける。

8.       はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは使用しない。

9.       そぼ、さば、いか、たこ、えび、かに、貝類等は離乳初期、中期には控える。

10.   夏期には、水分の補給に配慮する。また、果汁やスープ等を適宜与える。