インフルエンザと診断した患者さんに処方される薬剤として、現在国内で使用されている「タミフル」という抗インフルエンザ薬があります。

◆タミフルの効果◆

A型インフルエンザに対する効果:発熱期間を平均1日短縮する。

B型インフルエンザには、上記の効果は認められない(タミフルを飲んだ患者さんと飲まなかった患者さんの間に、発熱期間に差がなかった)

◆タミフルの主な副作用◆

嘔吐 17 件( 24.3 %)、下痢 14 件( 20.0 %)、腹痛といった消化器症状が主ですが、それ以外にも下記の資料にしめすような副作用が報告されています。

(注意)かなり稀なことですが「重大な副作用」として挙げられている6項目の中に、「精神・神経症状」があります。

[副作用 (重大な副作用)]

精神・神経症状(意識障害,異常行動,せん妄,幻覚,妄想,痙攣等)があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止し,観察を十分に行い,症状に応じて適切な処置を行うこと。

 ここでいう「精神・神経症状(意識障害,異常行動,せん妄,幻覚,妄想,痙攣等)」とは、具体的には:意識がもうろうとしたり、不安・恐怖心をうったえたり、突然窓から飛び降りようとしたり、変なものが見えたり・聞こえたり、奇声を発したりする、等です。

2005年、米食品医薬品局(FDA)にインフルエンザ治療薬タミフルを服用した日本の子供が、2000年の承認からこれまでに12人死亡したとの報告がなされています。FDAは「現時点では、薬との因果関係の判断は非常に困難だ」としています。死亡報告は日本だけで、内訳は自殺1人、突然死4人、心停止4人など。幻覚や脳炎などの精神神経症状は32例あり、精神症状の中には、12歳と13歳の子供が服用後に自宅の2階の窓から飛び降りた例が含まれています。 さらに2005年、国内で14歳と17歳の少年が服用直後にトラックに飛び込むなどの異常行動を起こし死亡していたことが判明しました。それ以降も同薬服用後の死亡につながる異常行動の報告が相次ぎ、厚生労働省は平成19年3月20日、輸入販売元の中外製薬に対し「10歳以上の未成年の患者には原則として使用を差し控えること」と添付文書の警告欄を改訂し、緊急安全性情報を医療機関に配布するよう指示しました。

★院長はこう読む:インフルエンザ感染症の軽快中に、もしこれらの症状が出現したとしても、それがタミフルの副作用かどうかは単純には断定できません。なぜならば同様の症状は、インフルエンザ感染症自体でも(タミフルを服用していなくでも)生じることがあるからです。またインフルエンザ感染症以外でも、発熱時には「熱せん妄」といって、わけのわからないことをいったり、意識が混濁したり、異常な行動をしたりするお子さんがいます。

すなわち『インフルエンザ感染症の急性期に生じる精神・神経症状がすべてタミフルの副作用であると短絡的に決め付けることはできない』ということです。 ただし、ここ数年の同薬服用後に生じる「死亡につながるような」異常行動が頻発しているという事実は無視できません。

インフルエンザ感染症の治療中には、このような精神・神経症状が生じことがあることを理解して看病しておく必要があります。

 

 

当院の現時点でのタミフル処方方針

 

1)発症後48時間経過した患者では使用しない(治療効果が期待できない)

2)B型インフルエンザには効果が薄い(未使用群と差がない)ので原則使わない (他の抗インフルエンザ薬、リレンザ、イナビルなどを使用する)

3)1歳未満は安全性が確立されていないので使わない

) 吸入薬(リレンザ、イナビル)の使用が可能な小学生以上にはタミフルは使用しない。

6)新型インフルエンザ感染が否定できない場合は、タミフルや吸入抗インフルエンザ薬を使用する。

7)処方の際は、服薬開始後、患者さんの観察を充分にすること(特に服薬開始後最低2日間は目を離さないこと)を約束していただく

 

こどもの病気に

 

                                 資料:

商品名:タミフル   有効成分・含有量:リン酸オセルタミビル

重大な副作用

1.  ショック、アナフィラキシー様症状  (頻度不明)

ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、蕁麻疹、顔面・喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

2. * 肺炎  (頻度不明)

肺炎の発症が報告されているので、異常が認められた場合には X 線等の検査により原因(薬剤性、感染性等)を鑑別し、適切な処置を行うこと。

3.  肝炎、肝機能障害、黄疸  (頻度不明)

AST  ( GOT )、 ALT ( GPT )、 γ-GTP 、 Al-P の著しい上昇等を伴う肝炎、肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

4.  皮膚粘膜眼症候群( Stevens-Johnson 症候群)、中毒性表皮壊死症( Lyell 症候群)  (頻度不明)

皮膚粘膜眼症候群( Stevens-Johnson 症候群)、中毒性表皮壊死症( Lyell 症候群)等の皮膚障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

5.  急性腎不全  (頻度不明)

急性腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

6.  白血球減少、血小板減少  (頻度不明)

白血球減少、血小板減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

7. * 精神・神経症状  (頻度不明)

精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、観察を十分に行い、症状に応じて適切な処置を行うこと。

その他の副作用

カプセル剤

1.  皮膚    頻度不明 注 2) 発疹、蕁麻疹、紅斑(多形紅斑を含む)、  そう 痒感

2.  消化器  頻度不明 注 2) 口唇炎・口内炎(潰瘍性を含む)、血便、メレナ、吐血、消化性潰瘍

3.  消化器  0.5 %以上

腹痛( 6.8 %)、下痢( 5.5 %)、嘔気( 3.9 %)、嘔吐、腹部膨満、便異常、口内不快感、食欲不振

4. * 精神神経系  頻度不明 注 2) 興奮、振戦、しびれ、嗜眠

5.  精神神経系  0.5 %以上頭痛、傾眠、不眠症、めまい

6. ** 循環器  頻度不明 注 2) 上室性頻脈、心室性期外収縮、心電図異常( ST 上昇)

7.  肝臓  0.5 %以上 AST ( GOT )、 ALT ( GPT )、 γ-GTP 、 Al-P の上昇

8.  腎臓  頻度不明 注 2) 血尿

9.  腎臓  0.5 %以上蛋白尿陽性

10.  血液  0.5 %以上好酸球増加

11.  呼吸器  頻度不明 注 2) 気管支炎、咳嗽

12. ** 眼  頻度不明 注 2) 眼の異常(視野障害、霧視、複視、眼痛等)

13.  その他  頻度不明 注 2) 疲労、発熱、低体温

14.  その他  0.5 %以上血中ブドウ糖増加、背部痛、胸痛

ドライシロップ剤

1.  皮膚  頻度不明 注 2) 蕁麻疹、紅斑(多形紅斑を含む)、  そう 痒感

2.  消化器  頻度不明 注 2) 口唇炎・口内炎(潰瘍性を含む)、血便、メレナ、吐血、消化性潰瘍

3.  消化器  5 %以上嘔吐( 24.3 %)、下痢( 20.0 %)

4.  消化器  5 %未満軟便、腹痛、嘔気

5. * 精神神経系  頻度不明 注 2) 嗜眠

6. ** 循環器  頻度不明 注 2) 上室性頻脈、心室性期外収縮、心電図異常( ST 上昇)

7.  肝臓  5 %以上 ALT ( GPT )上昇

8.  肝臓  5 %未満 AST ( GOT )上昇

9. ** 眼  頻度不明 注 2) 眼の異常(視野障害、霧視、複視、眼痛等)  、結膜炎

10. ** その他  頻度不明 注 2) 耳の障害(灼熱感、耳痛等)、発熱、低体温

11.  その他  5 %未満鼻出血

                                 

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